大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)174号 判決

事実及び理由

一  請求原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

二  成立に争いのない甲第四号証(本願考案の全文訂正明細書)によれば、本願考案の目的は、「これまで、水道管の地下凍結の解氷について、寒冷地では大変な時間と労力を要してきたが、本器は、短時間に解氷するよう考案したものである。」ことが認められる。

(審決取消事由の1の点について)

引用例に、「水道の屋内引込鉛管に電流を与えて水の凍結を防止せんとする装置あるも、この装置にては、ジユール損を対象としたものである」との記載のあることは、当事者間に争いがない。

右にいう「電流を与えて水の凍結を防止する装置」、すなわち、凍結防止装置は、右記載文言及びそれに続く引用例(成立に争いのない甲第六号証)の記載によれば、水道管に電流を流してジユール熱を発生させ、氷点以上(二度Cないし五度C程度)の温度を得るものであることが認められるから、その原理は、本願考案と同じであり、また、程度はともあれ、解氷能力も有するものであると認められる。そうであれば、引用例には、細部構造の説明はないが、解氷器が示唆されているということができる。

そして、かような「凍結防止装置」である以上、その出力端子を、凍結防止が望まれる水道管部分の両端に電気的に連結する手段がなければならないことは、多言を要しないところであり、したがつて、引用例には、「解氷器本体の出力端子と水道管とを電気的に連結すること」が示唆されているということができる。

審決のした引用例記載の技術内容の認定に誤りはない。

(同2の点について)

引用例の示唆する技術内容が前項に認定したとおりである以上、それと本願考案との相違点として、審決が、解氷器本体及びそれと水道管との電気的接続の点を摘示しなかつたのは相当であり、審決に誤りはない。

(同3の点について)

成立に争いのない乙第一号証によれば、一般に、多少乱暴な取扱にも耐えうる電気的接続手段として、キヤツプタイヤが本願考案の出願前に周知であつたことが認められる。

そうであれば、操作にあたり接続線が色々な物に接触することが予想される解氷器に、キヤツプタイヤを用いることは、当業者であれば、右一般的周知事項から、たやすく想到することができたものというべきである。

原告は、本願考案に使用されるキヤツプタイヤが、低電圧により大電流を流すために、おのずと四八mm2以上の太いものになる旨主張するが、仮りにそうであるとしても、解氷器に限らず、およそ電気機器のための接続手段として、予定される電圧、電流、使用態様などに応じて適切な特性、構造のものを選定するのは、当然のことであるから、前示の判断を左右するものではない。

原告は、本願考案にあつては、低電圧の大電流が鋼管の内壁面を流れることにより、氷の表面が解け、鋼管内で氷がゆるむと、これにかかつている水圧により氷が押出されていくものであり、鋼管自体を高熱にする必要は全くないのであるから、一般家庭の水道用として、特に寒冷地において埋設した鋼管が地中で凍結している場合、これを掘起こすことなく解氷することができると主張するが、管自体をそれ程高熱にしなくても、氷の表面が解けると管内の水圧により細氷が押出されるのは、事理上きわめて当然のことであり、引用例が示唆する解氷器本体及びそれと水道管との電気的接続を、審決指摘の周知技術によつて具体化すれば、当然に原告主張のような結果が期待されるところであるから、それをもつて本願考案の特段の効果ということはできない。

本願考案を、引用例に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、きわめて容易に考案をすることができるものとした審決の判断に誤りはない。

三  よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

人体に危険のない低電圧にすることができる変圧器と、並列接続あるいは直列接続のいずれかを選択できる出力端子A・B・C・Dを有する解氷器本体と上記出力端子と水道管とを連結するキヤツプタイヤからなることを特徴とする水道管凍結解氷器。

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